見えない力

大学を出て間もない頃、ピアノランドの著者である樹原涼子先生に出会い、マスターコースに通い、ピアノ指導について多くのことを学ばせて頂きました。あの頃教えて頂いたことは、今でも私のレッスンの軸にもなっています。当時、私が一番驚き、同時に困惑したのが二段階導入法というものでした。ピアノを習いたての生徒さんにいきなりピアノを弾かせず、その準備期間を設けてレッスンのプログラミングをするというもの。今でこそ一般的になりましたが、ピアノ教師になりたてで独身だった私は、年上のお母さんたちが怖くて(笑)、ピアノを習いに来てるのにピアノを弾かない⁈と言われたら、ちゃんと説明して説得できるだろうかといつもびくびくしていました。

その後、樹原涼子先生のノウハウをベースに、自分なりのアレンジを加えてレッスンできるようになり、今では自信を持って指導させて頂けるようになりました。

楽譜を見てとりあえず譜読みはしている、ならば弾けているかと言えばそうでないこともあるのです。音に対する感覚と言うのか、音感といってもいいかもしれません。音楽を感覚的にとらえる力。なかなか捉えにくい見えない力。この力こそが、二段階導入法で培われる力です。リトミックもそういうものだと思います。他の先生から移ってきた生徒さんで、実はこの見えない力が抜け落ちてしまっている、ということがあります。逆にこの力はしっかりついていますが、譜読みはできないというケースもあります。全ての力をバランスよく育てていかないと、ピアノレッスンはうまくいきません。ピアノを弾くことは、実に様々な力が必要なのです。